無施肥無農薬栽培に関する
学術研究

無施肥無農薬栽培による生産性・持続性・品質特性の 調査・研究結果を以下で紹介します。

桑田光雄・堀江武(2002)「異なる施肥量で栽培した桑葉の蚕児誘引性におよぼす影響」日本蚕糸学雑誌 71:75-81.

施肥量と蚕の摂食行動に関する研究(桒田・堀江, 2002)
異なる施肥量で育てた桑葉を比較した結果、無施肥栽培で育った桑葉が、蚕にとって最も誘引性が高いことが示されました。
研究成果は2002年、学術誌『日本蚕糸学雑誌』71巻(pp.75-81)に掲載されました。

背景


桑の施肥条件が葉の品質や香気成分を変化させ、それが蚕児(かいこ)の摂食行動に影響を与えることが知られている。
しかし、異なる施肥量で栽培した桑葉への誘引程度の違いについての報告は見られない。

目的


施肥量の違いが桑葉の化学成分および蚕児の誘引行動にどのような影響を与えるかを明らかにする。

方法


以下3つの方法で検証を行った。

1. 3年以上無施肥の桑葉と標準化学施肥の桑葉を対峙させ、蚕児(3〜5齢)の誘引数を比較した。
2. 無施肥(NF)、無窒素(NO)、窒素半量(N1)、標準窒素(N2)の4段階の施肥レベルを設定し、蚕児(5齢)の誘引試験を行った。
3. 無施肥区(NF区)と標準区(N2区)を中心に誘引物質であるフェネチルアルコールの含有量を定量し、施肥レベル間の差異を検証した。

結果


それぞれの結果は以下の通り。

1. 無施肥葉は標準施肥葉よりも蚕児を強く誘引し、その差は春蚕期で6.6倍、晩秋蚕期で52倍だった。
2. 窒素施用量が少ないほど誘引性が高まり、無施肥区(NF区)には蚕児の63%が誘引された。
3. フェネチルアルコールの含有量は、標準施肥区(N2区)と比較して、無施肥区(NF区)では9倍の含量が認められた。

結論


無施肥栽培では、蚕が好む自然な香気バランスが形成され、蚕児誘引性が高まることが示された。

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桑田光雄・堀江武(2004)「異なる施肥量で栽培した桑葉がカイコのフロキシンに対する感受性におよぼす影響」 日本蚕糸学雑誌 73: 71-76.

施肥量とフロキシン感受性に関する研究(桒田・堀江, 2004)
無施肥栽培の桑葉で育った蚕が、異物であるフロキシン(染料)に対して強いことが示されました。
研究成果は2004年、学術誌『日本蚕糸学雑誌』73巻(pp.71–76)に掲載されました。

背景


桑の施肥条件は葉の化学組成を変化させ、それが蚕児(かいこ)の生理応答や異物感受性に影響する可能性がある。
特に窒素施肥は葉中成分を変え、異物への反応を変化させる可能性がある。

目的


施肥量の違いが、蚕児のフロキシンに対する感受性にどのように影響するかを明らかにする。

方法


無施肥から標準施肥まで複数水準の施肥区で桑を栽培した。各区の桑葉を用いて蚕児にフロキシンを暴露し、
致死率や感受性指標(LC50やLT50)を比較評価した。

結果


施肥区間でフロキシン感受性に差が認められ、LC50という指標では、施肥桑葉で飼育した蚕児のフロキシン感受性は無施肥桑葉で
飼育した蚕児より約10倍高くなった。この要因として、アミノ酸組成の違いが関与している可能性が示唆された。

結論


無施肥桑葉で飼育された蚕児は異物に対して高い抵抗性を示した。

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桒田光雄ら(2006)「長期無施肥栽培桑園の土壌全窒素含量および全炭素含量と収量の推移」 日本作物学会紀事 75:28-37.

無施肥無農薬栽培下での桑の生育研究(桒田・白岩・堀江, 2006)
長期にわたる無施肥無農薬栽培により、土壌の窒素含量と炭素含量が概ね平衡に保たれ、桑の収量も比較的高く安定することが示されました。
研究成果は2006年、学術誌『日本作物学会紀事』75巻(pp.28-37)に掲載されました。

背景


桑園における無施肥を含む異なる施肥管理の継続が、土壌の養分動態や桑の生産・収量の長期動態に及ぼす影響を総合的に
明らかにすることが求められている。

目的


19年継続した無施肥栽培桑園と化学肥料連用栽培桑園における桑葉収量と土壌の全窒素含量・全炭素含量の長期動態について報告すること。

方法


無施肥桑園と標準施肥桑園を対象に、桑葉の収量・葉中窒素含量および土壌の全炭素・全窒素含有量を分析した。

結果


長期無施肥栽培桑園において、土壌全窒素・全炭素含量は15年後に平衡状態に達しました。
また、年間の収量が施肥とほぼ同等で安定していることが認められた(年間1800~2000 g m−2)。
さらに植物体全体の窒素含量は施肥よりも無施肥の方が低かったが、葉身への窒素分配率が施肥区より無施肥の方が高いことが分かった。

結論


無施肥区の土壌の栄養分が安定し、クワの生産が維持されることが確認された。
これは、地下深部の栄養源や、空気中の窒素を固定する働きなど、自然の力による窒素供給があるためだと推察される。
この窒素源の詳細解明が今後の課題である。

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T. Tada et al. (2024) "No Organic or Chemical Input Crop Production (NOChI-CP) and Activities of the NPO No Organic or Chemical Input Crop Production Research Group." Journal of Integrated Field Science 21: 13-17.

無施肥無農薬栽培(NOChI-CP)の総合的効果に関するレビュー(Tada et al., 2024)
肥料も農薬も用いない無施肥無農薬栽培(NOChI-CP)におけるこれまでの知見をまとめるとともに、NPO無施肥無農薬栽培調査研究会の紹介がなされました。本ミニレビューは2024年、学術誌『Journal of Integrated Field Science,』21巻(pp.13-17)に掲載されました。

背景


近年、人々の健康と環境保全に対する関心が高まっており、有機農法などの環境に優しい農法に関する広範な研究が行われている。こうした中で、一部の農家は、化学肥料や農薬、さらには有機資材さえも使用しない「無施肥無農薬栽培」(NOChI-CP)を採用し始めている。

無施肥無農薬栽培(NOChI-CP)の定義


No Organic or Chemical Input Crop Production (NOChI-CP) は、肥料、農薬、および有機資材の使用を避ける栽培方法。
NOChI-CPの提唱者である岡田茂吉師は、土壌には人間の生命を維持するのに必要な量の作物を本質的に生み出す能力があるとし、
これを「自然力」と称した。NOChI-CPは、土壌がその自然力を最大限に活用できるようにするための栽培方法である。
これまで「Nature farming」と呼んでいたが、多様な解釈との混乱を避けるため「NOChI-CP」
(NOChIは日本語の「農地」と音が同じ)と呼称した。

NOChI-CPについて


主に水田を中心とした実験と現地調査が実施され、NOChI-CPの特性が解明されつつある。

1 イネ栽培における生産性と養分供給
 ・収量と安定性:NOChI-CPのイネの収量は比較的高く安定した水準を示すことが9つの圃場での実例で確認されている。
 ・適応品種:「穂重型」「晩生」の形質を持つ品種がより良好にNOChI-CPに適応することが明らかになった。
 ・養分供給:土壌が持つ自然な養分供給力が窒素の大部分(62%)を担い、それに灌漑水(26%)と微生物(生物的固定 12%)が加わるという、複合的なメカニズムによって安定した生産が維持されている。
 ・根の生育:慣行栽培と比較して、NOChI-CP圃場では登熟後期におけるイネの相対生長速度(特に根)の低下が遅く、この時期の根の乾燥重量が施肥したイネを上回る可能性が示唆されている。
 ・病虫害への耐性:NOChI-CPのイネは、慣行的に施肥されたイネよりも病害虫に対する抵抗力が高いことが示されている。
2 クワ栽培とカイコへの影響
 ・生産性:19年間にわたる比較研究では、NOChI圃場の生葉の年間収量が1800 g m⁻²から2000 g m⁻²で安定しており、これは施肥圃場とほぼ同等だった。
 ・カイコ誘引性:NOChI-CPの桑葉は、施肥された葉よりもカイコ幼虫にとって有意に高い誘引性を示した。
 ・健康への影響:NOChI-CPの桑葉で飼育されたカイコ幼虫は、既知の発がん性物質であるフロキシンに対する抵抗性が、施肥された葉で飼育されたものよりも約10倍も強力だった。

NPO無肥研の普及体制と現状


NPO 無施肥はNOChI-CPの研究と普及を主な目的としている。
2023年12月31日時点で、正会員119名、賛助会員35名で構成されている。
NPO 無肥研の活動は、4つの主要な分野(研究・広報・技術支援・認証)に集中している。
なお、2023年12月31日時点で、NOChI-CP圃場として登録された総面積は62.5 haに達している。

総括および展望


NOChI-CPは、肥料や化学物質を使用しないにもかかわらず、イネにおいては安定し許容可能な収量を維持し、クワにおいては慣行農法に匹敵する安定した収量を達成できることが、科学的検証によって示されている。
今後の課題として、安定した収量を支える生産メカニズムについて、さらなる包括的な解明が必要である。
NPO無肥研は、この独自の栽培方法の普及を推進しており、その活動を通じて、NOChI-CPが環境保全と食の安全に貢献すると期待される。

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